難易度:
評価:
ベンチャー企業が資金調達していくうえで、必要最小限のことが分かりやすくまとめられた良書。
ベンチャー界隈(エコ・システム)で好循環を回すために、ベンチャー界隈に従事する方全員に向けられたメッセージも読み取れます。
想定読者
ベンチャー経営者というより、
ベンチャービジネスをサポートする専門家や国の政策担当者向けに書かれたように思えました。
というのも、本全体を通じて、日本のベンチャー界隈に対する提言が記載されていて、
米国(とりわけ、シリコンバレー)とのベンチャー文化との相違も記載されています。
会計知識はなくても読めるように配慮されていますが、腹落ちレベルの理解をするなら、少しファイナンス・会計の知識があった方がすんなり入ってきます。
そのため、
・会計士・税理士等の専門家や金融機関の担当者で、これからベンチャー支援を始める方
のような、ある程度知識ある方が読むのが、一番効用が高いと感じました。
感想
ベンチャー企業がEXITするまでに、
どのようなプレイヤーが(Who)、
どのような思考で(Why)、
どのように行動するのか(How)、
という点がとても分かりやすく説明されています。
この界隈の当たり前を、本を通じて学ぶことができるのは、一番この本でいいところだと思いました。
本書は全体を通じて、脚注や括弧での補足が多いです。
私自身も、よくビジネス文書やメールを書くとき、矛盾・誤解を生まないように気を付けていると、
ついつい文章が論文みたく説明口調で、重々しいものになりがちです。(私の悪い癖だが)
これは、専門家として誠実に事実を伝えることを重視する代償ともとれます。
(やや悪い言い方をすれば、保身に走る記載ぶりであります)
しかしこの本は、そうした「断り」の文章は多く挿入されていますが、とても読みやすい。
注釈や脚注でのリスクヘッジを最低限にしつつ、
可能な限り例外を省いてシンプルに記載している点に著書と編集者の優しさが感じられました
そして、本書の分かりやすさの根底をなしていると思います。
ベンチャー界隈にこれから身を置こうとしている方は、ぜひ読むべき本と思います。
一方で、会社法や会計、ファイナンスの知識を体系的に学ぶには、物足りなとは思います。(そもそもこの本の目的ではないことを著者も冒頭に断っている)。
ベンチャーにおけるファイナンスの重要性を学び、ファイナンスへの好奇心を生む1っ歩目の本として、非常に優れた本でした。
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